スペインの臓器移植
2019.01.192019年1月14日 EL MUNDO Web記事より
スペインの国際臓器移植組織ONT(Organización Nacional de Transplantes)によると、この5年間で37%にドナー患者が増えたそうである。2018年には、スペインで過去最高の5.318件もの臓器移植が行われた。世界のドナー数トップのスペインでは、特にカンタブリア地方やリオハ地方にドナーが多いことがわかった。2019年、ONTは設立30周年を迎える。社会福祉厚生労働省大臣のマリア・ルイサ・カルセド氏とONT代表であるベアトリス・ドミンゲス・ヒル氏はスペインは臓器移植が発展しているだけではなくドナー数も多いと言及している。現に2018年度のスペインでは、人口100万人あたり48人のドナーがいる計算となり、2.243人のドナーが存在し、世界で最高の5.318件もの移植が行われたのだ。これらの数字は、約14件の移植が毎日行われたことを物語る。
また、この5年間でスペイン国内に徐々に増え続えた数字を追ってみると、2014年には人口100万人あたりドナー数36人だったのが、5年後にはそれは48人に増えている。他の国々と比較すると、米国で31.7 人、オーストラリアで20.8人、フランスで29.7人、ドイツで9.7人。EUの平均ドナー数は22.3人である。カルセド氏は、スペインが他国との臓器移植とドナーに取り組む姿勢が全く違うと言う。また「病気の予防に力を入れて、今後移植の需要が減少することが1番望ましい」とも付け加えている。
ドナーの死亡原因は、心血管系疾患によるものが62%、無酸素脳症によるものが16.2%、外傷ではない心血管系疾患が10.5%、外傷性頭蓋脳症によるものが4%、その他の原因は7.6%という結果が出ている。高齢者のドナーもいて2018年には、60歳が57%、30歳が70%、80歳代でも10%もいる。そして最高齢のドナーはなんと91歳である。ベアトリス氏によると、心肺機能の停止が原因で死亡した人から来る臓器移植は、移植の数を増やす重要な手段となる。現に629人のドナーが国内には存在している。
移植に関しては、2018年に行われた5.318件の移植のうち、腎臓移植が3.310件、肺移植が369件と過去最大値を記録しているが、肝移植の1.230件は、C型肝炎ウイルスに対する新しい抗ウイルス薬のおかげで、おそらく適応症が低かった為にわずかに減少したとベアトリス氏は述べている。さらに、321件の心臓移植、82件の膵臓移植、6件の腸移植が行われた。
ドナーの増加とともに移植の待機リストにいる患者数も減少している。2017年は心臓と腸以外の移植を待つ者が4.891人だったのが、2018年は4,804人へ減った。その内の88人は子供(2017年には75人)である。また、肝臓移植では2017年には455人が、2018年では385人になっている。肺移植は、2017年の260人から 2018年の241人、膵臓移植は2017年の103人から2018年の98人となる。腸管移植は2017年に7回から2018年に8回、腎臓移植は2017年に3.942回が、2018年に3.933回行われた。スペインでは、85%の親族がドナーに対して前向きな姿勢を持っている。2018年には、14.8%の家族が拒否の意思を示した。これは他国と比べて非常に低い数値であると言える。
カンタブリア地方やリオハ地方は、スペイン国内でもドナー患者が多い地域と先に述べたが、現在も80名以上のドナーが存在する。そして、アストゥリアス地方、、エストレマドゥーラ地方、バスク地方、ナバラ地方と続く。カンタブリア沿岸の人口は高齢者が多いが、このおかげで移植を待機する時間も減少したことになる。それに加え、SNSの活用もドナー提供に大きく影響しているとベアトリス氏は述べている。
2018年、保健大臣はスペインが2022年までに100万人あたりドナー数50人であることと、全5.500件もの臓器移植を達成することを目標とする「50×22」計画の重要性を強調している。また、骨髄ドナー登録を391.609人から40万人へ増やすことを目標だという。このため、国家予算も前年比120%の増しの183万ユーロが割り当てられることになった。またベアトリス氏は言う。「以前のスペインでは特定の患者のために、条件の合う骨髄ドナーを探す動きがあったが、現在では骨髄提供の準備は十分にされており、スムースに手続きが行われるようシステムは整っている」と。
【映画 Todo sobre mi madre】
スペインの奇才ペドロ・アルモドーバル(Pedro Álmodovar)監督による1998年の作品。ストーリーは、最愛の息子を事故で失してしまう移植コーディネーターのマヌエラが、自ら息子の臓器移植同意書にサインするという悲しい出来事から始まります。この映画を通じて監督は、さまざまな環境に身を置く、強くて優しくてユーモアのある愛すべき女性たちを描いています。アデランテ大阪校にも貸し出しDVDがありますので、ぜひこの作品をご覧頂きたいと思います。