スペインの迷信:なぜ13日の火曜日は縁起が悪い?
2019.05.03スペインには「13日の火曜日には結婚も船出もするな(En trece y martes ni te cases ni te embarques)」という言葉があり、13日の金曜日は縁起が悪いとされています。スペインだけでなく、ラテンアメリカ諸国やギリシャでも同様に考えられています。アングロサクソンの国では「13日の金曜日」は縁起が悪いといいますよね。イタリアでは「17日の金曜日」が不吉な日だそうです。
キリストの「最後の晩餐」に参加した人数は13人で、13人目のユダが裏切りものとみなされています。黙示録の13章には7つの頭を持つ獣が描かれています。ユダヤ教のカバラでも13の邪悪な精霊の記述があり、北欧神話でも邪悪神ロキは神の晩餐の13番目の招待客になっています。タロットでも死に関連するカードは13です。「13」にはなぜか「望まれない、忌み嫌われる、邪悪」というイメージがつきまとうようです。
ある説によると、数字の「13」が火曜日と結びついたのは中世の終わりの頃で、当時、火星(planeta Marte)は戦争の神、つまり破壊や血、暴力の象徴として知られていて、火曜日(martes)も同様のイメージを持つようになったようです。さらに具体的に、キリスト教徒にとって深いトラウマとなったコンスタンティノープルの陥落が1453年の5月29日の火曜日だった、バベルの塔で言語の混乱が起きたのが13日の火曜日だったという説もあります。
他にも縁起が悪いとされている迷信を挙げてみます。日本でも同じように考えられているものもあれば、不思議なものもあります。
・黒猫(Gato negro)
古代エジプトでは黒い毛のネコ科の動物に出会うことは縁起がよいとされていましたが、カトリック教会では悪魔の存在の印とみなされています。多くの国では、猫が近づいてきたら縁起がよい、遠ざかっていけば縁起が悪いと考えられています。
・塩をこぼす(Derramar la sal)
塩は「友情」や「長く続くもの」の象徴で、その塩をこぼすことは友情や親交にとっての悪い兆候とみなされています。こぼしてしまったときは、塩を少量つまんで左肩の上にかけるといいそうです。
・傘を建物の中で開く(Abrir un paraguas en casa)
古くからの迷信で、天井のある所、特に家の中で傘を開くことは悪運を引き寄せると考えられています。この考えが始まったのは18世紀のイギリスで、家の中で傘を開いた人はその年に死ぬと考えられていたそうです。開いた傘で怪我をする事故がたくさん起きたのでしょうか。スペインでは家の中で傘を開いて乾かすのはやめておいた方がよさそうですね。
・梯子の下を通る(Pasar por debajo de una escalera)
これは、キリスト教では「父(父なる神)、子(神の子)、聖霊」の3つが一体で「唯一の神」であるという「三位一体」の教えがあり、三角形が伝統的に神聖なものの象徴と考えられていることに由来します。梯子と壁で作られた三角形を通ることは神への冒涜にあたると考えられています。
・鏡を割る(Romper un espejo)
昔から鏡は占いの道具として使われ、恐ろしい未来を見せたくないときに鏡を割ったそうです。このことから、鏡が割れると7年間不運が続くと言われます。ちなみに体の変化の周期が7年だそうです。
・朝起きるときに左足から歩き始める(Levantarse con el pie izquierdo)
ケルトの伝統や太陽の動きから、「右」は幸運を、「左」は不運を呼ぶと考えられているようです。左足から歩き始めてしまったときは、十字を3回切るといいそうです。
・ハサミを開いたまま置いておく(Dejar las tijeras abiertas)
ハサミを開いたままにしておくと悪運を引き寄せると考えられています。もしハサミが床に落ちてその刃先が自分の方に向いていたら、ハサミを拾って、左肩の上に塩をかけると悪運を避けられるそうです。ギリシャ神話で、運命の女神がハサミで人生の糸を切って人間の寿命を決めると考えられていたことに由来するようです。
・黄色の服を着る(Vestir de amarillo)
これはフランスの劇作家モリエールが公演中に結核で血を吐いて亡くなったときに着ていたのが黄色の服だったことから、「黄色の服は縁起が悪い」となったようです。しかし、それよりずっと以前から、闘牛で使われるカポテという布の裏側が黄色で、闘牛士が牛に突かれて死ぬ場合に最後に見る色が黄色だから縁起が悪いとも考えられていたようです。スペインで黄色の服を着るのは要注意ですね。
いかがでしたか?国が変われば迷信も違いますね。今回は縁起が悪い迷信を紹介したので、今度は縁起がいい迷信も紹介したいと思います。