なぜスペインはメンバー国ではないの?- G20での微妙な地位
2019.05.302019年6月末に大阪でG20が開催され、関係閣僚会議も日本各地で開催されます。日本がG20の議長国になるのは初めてのこと。もちろんスペインも参加予定です。ただし、「招待国」という地位での参加です。
G20の定義はというと、「経済的、財務的および政治的な協力のための主要な国際フォーラムであり、グローバルな課題に取り組み、それを解決するための方策を探るための場」。構成しているのは、EU(欧州連合)と、ドイツ、サウジアラビア、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、韓国、アメリカ合衆国、フランス、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、イギリス、ロシア、南アフリカ、トルコの19カ国です。
実はスペインはG20のメンバー国ではありません。G20は蔵相大臣と中央銀行総裁のフォーラムとして始まり、1999年9月25日のG7蔵相大臣の会合で創設されました。G7は主要な経済大国7カ国のドイツ、カナダ、アメリカ合衆国、フランス、イタリア、日本で構成され、1998年にロシアが加わりG8になりました。
1999年にEUを含めて12の主要新興市場国をG8に加えることが決定。スペインはというと、G7やG8の経済大国でもなく、新興市場国でもないためにメンバー国にはなれないまま。世界総生産の85%、世界の人口の66%、国際取引の75%、そして国際投資の80%を占めるほどの重要なフォーラムで発言権も投票権も持てないままの状態が続いています。
しかし、スペインは今回の大阪のサミットにも参加予定で、前回のブエノス・アイレスのサミットにも参加、2008年以降のすべてのG20の会議に参加しています。スペイン外務省によると、スペインがG20に初めて参加したのは2008年11月ワシントンの特別サミット。当時のフランスのニコラス・サルコジ大統領が、フランスが担当することになっていたEUの議長国とG8のメンバー国としての2つのポストのうちの1つをスペインに譲ったための参加でした。
ワシントン・サミットの後、スペインは2009年4月のロンドンでの特別サミットに公式に招待されました。ロンドン・サミットへの参加で、国際社会での政治的、経済的な重要性に応じたG20でのスペインの地位が確固たるものになったとスペインは考えました。さらに2009年9月のピッツバーグの特別サミットにも参加しました。
その後、スペインは2010年6月のトロントの特別サミットに参加、韓国がG20の議長国を務めていたときの2010年のソウルサミットでは、スペインが拡大G20のメンバー国になるという可能性を韓国が後押ししました。以降、スペインはすべてのサミットに参加しており、EUで代表されているということに関わらず、すべてのサミットに参加することが許されている永久招待国という地位をもつ唯一の国になっています。
スペインのシンクタンク、Real Instituto Elcanoによると、「永久招待国の役割で地位を固め、チャンスがあればメンバー国になるために、スペインはフォーラムのメンバー国や自国にとって意義のある分析や提案、位置づけを提供していくことができる」
G20は決定を行うための場というよりは、スペインにとって重要なグローバル・ガバナンスについての課題について討議、推進する場になっており、ある領域では決定力や政策の協調能力を失いつつあります。
「スペインがこのフォーラムに参加し続け、最終的にメンバー国としての地位を獲得するために種まきをしていくことが重要だ。有利に働く要素もあれば、不利な要素もある。まず、スペインがこのフォーラムで自国の利益や他の参加国の利益に即した提案や計画を提供することが必要だ。単にG20に「参加している」だけでなく、そこで「存在感」を持つ必要がある。」とシンクタンクReal Instituto Elcanoは語ります。
世界経済およびG20におけるスペインの重要性についての分析では、G20の最初のサミット以来、「世界経済におけるスペインの相対的な重要性は、2008年に始まった経済不況や新興市場国のために相対的にも絶対的にも低下している。」
国際的な存在としては、Elcanoの指標によると、177.9で12位。経済では19位、GDPでは14位、軍事力では14位、外交力では9位。高齢化による人口減少や移民の減少、国外への移住の増加のため人口では28位に留まっています。
このようなスペインの相対的、絶対的な地位の低下で、特にヨーロッパの国が多すぎるという状況があるため、G20における地位も危なくなる可能性があります。また、イギリスがEUを脱退するという決定がスペインの存在を強化する可能性もあります。脱退が完了すればイギリスはEUの国ではなくなるためです。当面はG20への参加の形は変わらないとしても、スペインはアクティブに動いていくだけでなく、機会があればメンバー国になるために準備していかなければなりません。メンバー国になることを目標にすることは逆効果にもなり得ます。しかし、スペインがより多くの参加国の興味を引くような問いかけをすれば、スペインの重要性は増していくでしょう。