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【2019年度版】11月総選挙とスペインの政党のまとめ

2019.11.16

2019年11月10日(日)に行われたスペイン総選挙。注目した方も多いでしょう。今年の総選挙決行は2回目。4月の総選挙で第1党の社会労働党(PSOE)の議席が過半数に届かず、連立政権樹立ができなかったために決行された再選挙でした。しかし、今回の総選挙でも与党は過半数に届かず、また既存政党から2010年以降に創立された新興勢力に票が流れるなど、その選挙結果は世界中で大いに話題となっています。ではここで現在のスペインの主たる政党を確認してみましょう。ある程度把握しているとスペイン語のニュースを大いに読みやすくなりますよ。

 

 

 

PSOE(Partido Socialista Obrero Español)スペイン社会労働党

現在の与党。PPと勢力を二分する大政党。30年以上にわたって、スペインはPPとPSOEの2つが交代で政権を握る二大政党制が続いています。とても歴史の古い政党で1879年に創立され、当時はマルクス主義を掲げて反君主制を支持し、スペイン内戦時には他の左派諸政党と共にスペイン人民戦線を組織しました。しかし1970年代に当時の党首フェリペ・ゴンサレスの指揮下で中道寄りの旋回がはかられ、現在は社会民主主義に転じて君主制を支持する中道左派の立場を取ります2018年6月にライバルPPのラホイ前政権が不信任決議により退陣し、党首ペドロ・サンチェスが現スペイン国の首相となりました。4月の総選挙では123議席を獲得しましたが11月に獲得できたのは120議席に留まりました。

 

PP(Partido Popular)国民党

PSOEと勢力を二分する大政党。前身はAP(Alianza Popular、国民同盟)。APは1976年のスペイン君主制復活時に創立された政党で、当初は元フランコ政権内の保守政治家らで構成されていましたが、1977年の総選挙では国民の支持を得られませんでした(同時期に創立したUCD(Unión de Centro Democrático、民主中道連合)に圧倒的に支持層を奪われていました)。しかし後にUCDが内部崩壊したことでAPが支持を集め、1989年に路線を変更した中道右派PPとして再出発しました。1996年、2000年、2011年、2015年の選挙で政権を獲得しましたが、2018年6月の不信任決議により現在の与党はPSOEに交代しています。汚職などで支持率を減らし2019年4月の総選挙では過去最低の66議席でしたが、11月の総選挙で88議席まで復調しました。

 

VOX ボックス

2013年に創立した極右政党。PPの元党員らを中心に組織されています。4月の総選挙で24議席、そして11月の総選挙では52議席を獲得し第3党に躍り出たことで大きな話題になりました。現在世界各国でナショナリズム(国家主義)が台頭しつつありますが、まさにそのスペイン版の政党。不法移民の追放、反LGBT、闘牛の活性化など排外主義的・伝統主義的な立場を取っています。VOX躍進の影には、現在も大きな騒動となっているカタルーニャ独立運動を受けて、それに反対する無党派層の支持を集めたことが指摘されています。

 

UP(Unidas Podemos)ポデモス連合

若者を中心に支持を集めている左派政党。2011年5月、スペイン国内の経済危機や失業率が22%を超えた貧困問題などで怒った国民たちが大規模デモを行い、その流れで2014年に発足しました。党首パブロ・イグレシアスは名門コンプルテンセ大学の政治学の教授で、同じく党員の中には多くの大学教授や知識人が含まれています。YoutubeやSNSなど21世紀のインターネットメディアを駆使した選挙活動によって支持層を広げています。UPは2019年11月の総選挙の後にPSOEとの連立政権を樹立させることで合意しました。

 

C’s(Ciudadanos)シウダダノス

2005年に発足しバルセロナに本部を置くシウダダノスは、激化するカタルーニャ民族主義・独立主義と反対の立場を取る人たちの受け皿となった新興中道政党。2015年の総選挙では第4党になり、また2019年4月の総選挙では57議席を獲得して第3党にまで昇りつめました。しかし独立反対の立場から、カタルーニャ内部ではリベラルな一方で国内全体の観点からは保守的であるなどの党内の内部矛盾をうまく打開できず、党首アルベール・リベラも人望を集められずに急速に国民の信用を失い、11月はわずか10議席という惨敗に終わりました。シウダダノスの転落も今回の選挙で注目すべき結果の1つです。

 

11月の総選挙は根強く続くカタルーニャの独立運動の反動が色濃く反映された結果となりました。スペインの政治は、今後どのように舵を取られるのでしょうか。