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ローザ・ボヌールのライオン画《エル・シッド》、プラドの常設作品に

2019.10.09

今秋から、プラド美術館の常設展示に新たに加わった絵画があります。19世紀のフランスの写実主義画家ローザ・ボヌールの作品《エル・シッド》です。これは「動物を描かせたら右に出る者はいない」とまで謳われた作者による、一頭のライオンの大きな正面肖像画です。作品ページ

 

ボヌールは、もともと動物を描くことに類稀な情熱を抱いていた画家で、牛や馬など多くの作品を残しています。その動物画の見事なリアリティは一目瞭然です。国際的に高い評価を受けた彼女の作品は、パリのオルセー美術館や、ロンドンのナショナル・ギャラリー、ニューヨークのメトロポリタン美術館内にも所蔵されています。彼女は、祖国フランスとプロイセン王国の間で勃発した普仏戦争(1870-1871)時代から、ライオンの画をしばしば描くようになりました。今回の《エル・シッド》は1879年に描かれた作品です。スペインにまつわるタイトルが絵につけられたのは、彼女が隣国スペインに対して非常に友愛を感じていたからでもあるでしょう。

 

この絵は画商エルネスト・ガンバールに寄贈し、その後、プラド美術館所蔵作品の1つに加わりました。ところがその後、長らく展示室に配置されておらず、本作品は知られざる作品に留まっていました。2017年に一度、美術館で開かれた特別展「他者のまなざし」で展示されたのみでした。

 

今回ボヌールの《エル・シッド》が常設作品となった背景には、あるスペイン人グラフィックデザイナーがSNS上で声をあげたことにありました。その人は、プラド美術館展における、男性画家作品の優位性を批判し、ボヌールのような優れた女流画家の作品をもっと常設すべきであると訴えました。これを受けて、プラド美術館は本作を今秋から常設コレクションに加えました。今後も、女流画家たちによって生み出された、同館所蔵のまだ日の目を見ていない傑作が、新たに公開されるかもしれません。