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スペインで広がるシェアサイクル

2019.06.20

大都市ではシェアサイクルの存在は珍しいものではなくなっています。シェアサイクルのシステムはスペインでも浸透し、都市部ではなくてはならないものになりつつあります。新しいものが登場したときによくあるように、シェアサイクルが登場したときは懐疑的な目で見られていましたが、利用者の後押しと環境への関心によって嫌疑はすっかり晴れました。

 

 

IESE Business Schoolが「バイクシェアリング」の経済性、健康への影響およびその将来を13の都市(ロンドン、 ベルリン、 マドリード、パリ、ハンブルク、 ウィーン、バルセロナ、ミラノ、コペンハーゲン、ケルン、トリノ、ビルバオ、サン・セバスティアン)で調査したところ、1ユーロの投資に対して、調査対象の都市では1.37ユーロから1.72ユーロを回収していることがわかりました。調査では歳入、雇用の創出、地元の関係セクターへの影響、雇用の創出の恩恵を受けた家庭での需要の増加などが評価されました。

 

 

経済的影響だけではすべての都市でシステムの費用をカバーしきれてはいませんが(1ユーロの投資のリターンは0.79ユーロから1.14ユーロ)、報告書では「健康への効果と組み合わさって、十分採算が取れている」としています。

 

 

調査では肉体的な活動の増加、交通量の減少が考慮されました。結果として、これらの効果によって2014年から2016年に調査された都市で90件の早すぎる死が予防されたことになり、この数字は65歳以下の人の死亡件数の0.12%に当たります。

 

 

スペインでシェアサイクルが歓迎される理由

自転車関連機関のデータによると、2017年、スペインでは12歳から79歳の人の48.2%が自転車を利用し、4分の1は毎週利用しています。2009年以降、自転車の利用者は3,500万人増加しており、これからも自転車の利用は増えていくと見られます。

 

 

なぜシェアサイクルの利用が増えているのでしょうか?マドリード自治大学の教授によると3つの理由が考えられるそうです。第一に、健康状態についての不安が増していることが挙げられます。これは座ってする仕事が多く、健康への影響を心配する人が増えているためです。次に、経済危機の影響もあります。収入が減り、毎月の交通費が高く感じられるようになり、都市部では移動手段として自転車を使う人が増えています。第三の理由は、環境への関心の高まりと関係しています。気候変動や化石燃料の消費についての不安といった一般的なものから、マドリードなど大都市での汚染といった具体的な不安があるようです。

 

 

シェアサイクルの現状

スペインで公共のシェアサイクルのシステムが始まったのは2003年のことです。コルドバがCycloCityとして25台の自転車でサービスを開始したのが最初で、ヒホンが続きました。以降、40以上の自治体でサービスが提供されています。マドリードで公共のシステムBiciMADが始まったのは2014年で、2017年には交通カードが使えるようになりました。他にシェアサイクルがある主な都市は、バルセロナ(Bicing)、バレンシア(Valenbisi)、セビリア(Sevici)、サラゴサ(Bizi)、マラガ(Malaga Bici)、サン・セバスティアン(dBizi)などです。

 

 

現在、合計で43のシステムがあり、そのうち34のシステム(79.1%)が従来の自転車(電動アシストではない自転車)、5つのシステム(11.6%)が電動アシスト自転車、4つのシステム(9.3%)が両方の組み合わせで行われています。運営方法は、86%が間接民営、9.3%が公営、4.7%が民営です。自転車1台あたりの年間の平均コストが低いのは従来の自転車で(1,081.19ユーロ)で、電動アシスト自転車のコストは3,172.68ユーロでした。

 

 

スペインはシェアサイクルのシステムの導入においてパイオニア的な存在で、2010年には100ものシステムが稼働していました。当初はそんなに多くの人が利用するとは考えられていなかったので驚きです。シェアサイクルの魅力は機動性のよさでしょう。必要なときにいつでも気軽に自転車を使えるのは大きな利点です。

 

 

民間システムの参入

民間のシステムは、2017年の固定ステーションを持たないDonkey Republicが最初で、現在、マドリードとバルセロナで営業しています。次いで、シンガポールのObike、中国のOfoが参入しましたが、昨年スペインから撤退しています。

 

 

2018年には3つのブランドがより多くのサービスを携えて参入しています。Mobike、TuCycle、Scootの3つです。Mobikeはマドリード、サラゴサなどに拠点を置き、TuCycleはヒホン、Scootはバルセロナで営業しています。さらにElectric RGも2018年末にサラゴサに100%電動アシスト自転車のサービスで参入し、スペイン全土への拡張を予定しています。

 

 

スペインではシェアサイクルのシステムがさらに広がっていきそうです。電動アシスト自転車なら坂が多い地形でも大丈夫ですね。スペインでは、自転車専用レーンが整備されているところも多いので比較的走りやすいようです。

 

 

日本でも都市部や観光地を中心にシェアサイクルが広がってきています。たとえば、ドコモのバイクシェア(東京、横浜、大阪、広島など)、HELLO CYCLING(東京、大阪、名古屋など)、Mobike(札幌、福岡)などがサービスを行っています。健康や環境への関心の高まりや、自転車のフットワークの良さ、経済性などが背景にあるようです。電車やバスで行くより、自転車の方が小回りが効いて速いことがありますよね。いつも見ている風景も自転車に乗って見ると違って見えるかもしれません。交通渋滞に悩まされずに移動でき、健康にもよいとなると試してみる価値はありそうです。

 

 

スペインのシェアサイクルは定期利用の他に、1日、2日、3日など単発的に利用できる場合が多いです。もし利用される予定があれば、一度ホームページなどで利用方法や条件などを確認してみてください。