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スペインの学校は宿題を出しすぎている?

2019.08.31

皆さんは子供の頃、宿題をしっかりやっていましたか? 多すぎると感じたことはありましたか? ときどきスペイン人たちから「スペインの教育現場は子供たちにあまりにも多くの宿題を課している! これは問題だわ!」という意見を聞きます。もちろん宿題の量の多い・少ないの感覚には個人差があるので、全てのスペイン人がそう思っている訳ではないのですが、それでも「スペインの宿題の出しすぎ問題」は社会ニュースになることもあります。

 

特に警鐘を鳴らしているのはWHO(世界保健機関、スペイン語ではOMS)で、その調査によると、スペイン国内では11歳の児童のうち34%の男子と11%の女子が、宿題に強いストレスを感じています。さらに経済協力開発機構の調査によると、スペインは1週間あたり最も宿題にかける時間の多い国の1つになっていて、他国では平均して宿題にかかる時間は5時間なのに対して、スペインは平均6時間に昇り、さらに勉強熱心な児童や生徒は7、8時間とほぼ1日の労働時間に近い長時間を宿題に費やしているとのことです。

 

もちろん宿題をこなすことは大切です。学校でした勉強の予習、復習、発表の準備など……自宅学習の習慣は小さい頃から身につけておいて損はないでしょう。けれどもこのスペインの宿題の量と時間について批判している人たちは、家の中で宿題をするのが子供たちの身体・精神の負担になる上、本来なら学校側で学ばせるべきことを家での宿題に変えて、学校側が教育を投げ出している、と言います。頭痛や肩こりといった肉体疲労から、ストレスや悲しみなど精神的な負担から子供たちを守るため、団結して学校側に異を唱える親たちも多いです。

 

そうした中で、昨年2018年にはバレンシア州で、国内で初めて、宿題の量を制限する条例が出されました。同州では6歳から16歳までの児童・生徒を対象に、なるべく最大限に、学校内で教育に関する活動は終わらせ、家に過度に宿題を持ち帰らせないように学校側に要請しました。要は、先生側に「だらだらと教えるな、学校側で学ばせることはしっかり学ばせて、放課後は子供たちを勉強から解放するように」という要請です。学校から帰ったら自由に遊ぶという、子供たちの大切な権利を守るための条例です。自由に遊ぶという時間も将来、社会的人間として成長するために必要な大切なプロセスであるからという判断でした。

 

確かに宿題というのはただ量をこなせばいいというものではないですよね。宿題だけやたらと多くて先生たちが適当に教えていたら本末転倒……。じゃあ宿題ゼロが全く良いか? ということでもなく、肝心なのはいかにして自発的に勉強できる子供に育てられるかだと思います。強制でやらされるものはどんなものでも苦痛になるでしょう。