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なぜスペインの家の窓は小さいのか?

2019.06.12

スペインに行ったときに「窓が小さい」と思ったことはありませんか?スペインは日照時間が長い国なので、日差しを避けるために窓が小さいのでしょうか?実はそれだけが理由ではないようです。

 

 

スペインの建築家Carlos Tomás 氏はスイスでの仕事を終えて6年ぶりにスペインに帰り、ピソを借りました。そこで最初に気づいたのがスイスのアパートと比べて窓のサイズが小さく、日よけがついていることでした。「建物の種類は違いますが、一般的に窓のサイズは中央ヨーロッパの方が大きいです。確かに中央ヨーロッパでは日差しが弱く、人々はより多く光が入ることを望みます。それはそうなのですが、それ以上に窓はより幅が広く、高さもあります。」

 

 

両国のLeroy Merlin(大手ホームセンター)で調べてみると、スペインの二枚戸の窓の平均のサイズは高さが1.15メートルで幅が1メートル。対して、スイスの同様のモデルは高さが2.15メートルで幅が1.2メートル。「明らなのは、スイスでは窓は壁にある開口部ではなく、透明な壁になっているということです」

 

 

確かにスペインの年間の平均日照時間が2500時間から3000時間で、オランダなどの国では1600時間であることを考えると、スペインの窓が小さいのは、おそらく日差しを避ける手段として理にかなっているように思えます。しかし、そうとも限らないのです。たとえば、マドリードやバルセロナの市街地の通りのバルコニーを考えてみると、ある日は太陽に両手を広げるように窓を開け、必要なときは日差しを避けるために日よけや鎧戸を使っていることに気づきます。

 

 

同様に、カンタブリア地方の街では、ガラス張りの天井や屋根のあるスペースが伝統的な建築の一部になっています。この地方ではスペインの平均日照時間より日照が少ないため、まさに日差しを求めてのことですが、窓のモデルはといえばスペインの一般的なものになっているのです。つまり日差しだけが理由ではなく、経済的な他の要素が存在しているのです。レンガの値段と窓のアルミや他の部品の値段が関係してくるのです。

 

 

壁材として一般的に使われている空洞レンガ(内部が空洞のレンガ)の平均のサイズは長さが24センチで高さが8センチ、平均価格は0.07ユーロ。標準的な窓を作るとすると51個分のレンガに相当し、そのコストは約3.5ユーロ(工賃やモルタル分は除く)。同じサイズの窓は100ユーロなので、レンガのコストは優秀です。

 

 

「レンガの価格はアルミよりも安い。さらに窓を構成するすべての部品のコストを考える必要があり、エネルギーの損失を避けるための断熱の基準を満たさないといけない。レンガの壁に断熱材を設置する方が常に経済的です。」と建築家は語ります。

 

 

1960年代から1970年代にかけて、マドリードのような都市は郊外から引っ越してきた多くの人を受け入れて、新しく建設された地域に住まわせる必要がありました。こうしたピソの団地の多くは中程度の品質の建材を使用して短期間で作られ、最近の建物より窓が小さくなっています。「この年代に作られた団地は、急速な成長と経済的資源の不足に対応したものでした。それほど厳しい規制はありませんでした。驚いたことに時代が変わったにも関わらず、当時の選択の多くが今でもなされています。最近の窓のサイズは大きくなっていますが、隣国のサイズとは比較になりません」とCarlos氏は言います。その結果、自然光があまり入らない家が多く、家の中で日常的な活動をするために電気を多く使わないといけない状態になっています。

 

 

そして、リフォームではこの採光の問題を解決できません。Aurora Monforte氏は1978年にマドリード南部の人気の地区にピソを購入しました。この団地は1960年に建設され、2枚戸の窓は高さが1メートル、幅が80センチで、現在設置されているものよりずっと小さくなっています。「日差しが恋しいです。大きな中庭があって、そこから十分な日差しが入るはずなのですが、(実際は入らずに)通り過ぎていってしまいます。もっと大きな窓にしたいのですが、家の外部構造に手を入れなければならず、それは許可されません」と嘆きます。

 

 

建設業者もこの点に関して言い分があります。最終的な予算には、建築家の計画、材料と施工のコストが入ります。「建築業者は自分にとって利益のある窓を望み、建築家は自分の計画にあった、きちんときれいに作られた窓を望みます。日よけの収納部分は見た目が悪く、正面にきれいに設置するのは費用がかかり、作業も難しいのです」と建築事務所を持つManuel Ocaña氏は語ります。さらに窓のサイズのことで顧客とよく喧嘩になるといいます。「顧客は常により大きい窓を望みますが、価格のために小さいものになるのです」

 

 

窓のサイズ1つを取っても、国によっていろいろな事情があるようです。調べてみると、冬の隙間風や電気代の高さなど、窓のことで困っているスペインの人は多いようで、窓のリフォーム業者も多くありました。ただ、上述のように建物の外部構造に手を入れることは許可されないようで、窓のサイズを大きくするのは難しいようです。日差しがあふれる国なのに、家に日差しが入らなくて電気を使わないといけないのは何ともやりきれない気がします。