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スペインの黄色いポストの秘密

2019.06.11

 

スペインの郵便ポスト(buzón)は真っ黄色。形も円柱で、私たち日本人に身近な四角い赤い郵便ポストとは全然ちがいます。ではなんで黄色のポストなんでしょうか??

 

昔むかし。ヨーロッパでは13世紀にイタリアのタッソ家(Los Tassos)の人びとらが近代郵便制度のプロトタイプを開拓しました(ベルガモ飛脚)。彼らはボルゴーニャ、フランドル地方、イタリア、神聖ローマ帝国(現ドイツ)、フランスと郵便網を作り、またスペインの郵便網も、この家柄の人物フランシスコ・デ・タシス(Francisco de Tassos)が開拓しました。そのあと1624年にタッソ家は伯爵の称号をもらいます。彼らは神聖ローマ帝国に屋敷を移し、屋号を「Thurn und Taxis」と変えましたが、一方でスペインでは「タシス家」と呼ばれ続けていました。ヨーロッパの郵便網は当初、このタッソ家に連なる血筋の人びとが占有していたのですが、のちに政府の郵便網もできたことで競合相手が出現し、タッソ家の占有権は失われていきます。それでもこの家系は、ヨーロッパの郵便ネットワークの開拓者として、絶大な知名度を誇りました。

 

実はスペイン、というより欧州のポストが黄色いことはごく当たり前(フランスやスイスのポストも真っ黄色です)のことなのですが、この「黄色」の由来はタッソ家です。タッソ家の郵便では黄色い馬車が配達に利用されていましたが、その黄色が現在までヨーロッパ郵便の象徴色として残っているのです。

 

またロゴ(王冠とホルン)の由来も同じです。やっぱりタッソ家の古い郵便時代から、このロゴが使われていたので、現在も時代や国によってデザインに多少の差はありますが残っています。だからスペインに長く住んでいたら、他のヨーロッパで郵便ポストを探すときもほぼ同じ色・同じマークを探せば良いので苦労しないですね(たまに赤や緑といった違う色のポストもあります)。

 

ちなみにスペインでは、1716年に王立の郵便「Correos」が制定されました。フェリペ5世の治世です。同時にタッソ家のような民間業者に郵便を任せることを辞め、国が管理・運営するようになりました。そして「黄色いポスト」が初めて設置されたのは、1762年。そのあと1850年に切手郵便の制度ができました。