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カルロス3世が「スペインの最も優れた君主」と呼ばれる訳

2020.08.31

マドリードのアルカラ門、シベーレスの噴水、スペイン銀行などマドリードの歴史的な建築物の多くを作ったのがカルロス3世です。世界的に有名なプラド美術館もカルロス3世が自然史博物館として計画したのが始まりです。

 

カルロス3世はフェリペ5世とその2番目の妻パルマ公女エリザベッタ・ファルネーゼとの間に生まれました。フェリペ5世といえばフランスの「太陽王」ルイ14世の孫で、スペイン・ボルボン朝の最初の国王です。

 

フェリペ5世にはすでに後継者のフェルナンド6世がいたため、カルロス3世はイタリア北部のパルマ公、その後ナポリ国王を務めていました。しかし、フェルナンド6世が後継者を残さずに亡くなったため、1759年にスペイン王カルロス3世として即位することになったのです。

 

スペイン王として即位したときには、すでにナポリ王として25年の統治の経験を持っており、スペイン国王を1788年までの29年務めました。特に優れた能力を持っていたわけではないようですが、常に国民の福祉を念頭に置き、誠実で慎ましい人物だったそうです。豪華な服には興味は持たず、食べるものも着るものも質素で、趣味は狩猟。即位して2年後に妻のマリア・アマリアを亡くしたとき、「22年の結婚生活の中で、彼女は初めて私の気に食わないことした」と言ったとか。とても仲のよい夫婦だったようです。

 

カルロス3世は優れた人材を登用し、マドリードの整備を進めました。彼が即位したときのマドリードは首都とは思えない状態だったようです。彼はマドリードの「市長」のように仕事にあたり、数年で他の国の首都のレベルまでマドリードを整備しました。このときに、アルカラ門やシベーレスの噴水、スペイン銀行、プラド美術館などが作られたのです。

 

さらに、救急車の設置、住宅への住所の番号付け、街灯の設置だけでなく、2000キロ以上もの道路や600以上の橋の整備などのインフラの整備も進めました。王立植物園もカルロス3世が完成させています。他にも、商業の自由化、軍隊の改革なども行いました。

 

対外的には、他の国と同様に新大陸のアメリカに何度も探索隊を派遣しました。科学・植物に関する探索という形で行われていましたが、もちろん政治的な意味合いや資源の開拓の目的もあったようです。

 

このような業績を持つカルロス3世は、歴史学者の中ではほぼ満場一致で「最も優れたスペインの君主」と言われています。彼の治世にフランス革命やナポレオン遠征のような歴史的な大事件が起きなかったことも幸いしたのでしょうが、彼の誠実で慎ましい人柄と人材登用の上手さが「優れた君主」と呼ばれる理由となったのは確かだと思います。

 

マドリードに行かれることがあれば、カルロス3世の業績をたくさん見ることができます。

プエルタ・デル・ソルにはカルロス3世の銅像があります。

早く安心して実際に見られる日が来ることを願いつつ。