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「今では、そのぼくが山椒魚になっている」

2018.10.18

水槽の中をゆったりと泳ぐ小さな両生類・ウーパールーパー。微笑んだような顔と人間の赤ちゃんのような手足を持つこの不思議な水生生物は、一体どこからやってきたのでしょうか。答えはメキシコ。別名「メキシコサラマンダー」です。あるいは、スペイン語圏では「アホローテ(ajolote)」という名前で親しまれています。

 

 

多くの日本人はこの生物の存在を知っていますが、スペイン人たちにとってはそうでもないらしく(?)、「アホローテ」も「ウーパールーパー」も聞き慣れないADELANTEのネイティブ講師は「ほら……あのちっちゃい生物なんだっけ……プープープープー?」と謎の呼び方をしていました(笑)。

 

とはいえ、ウーパールーパーは日本だけでもっぱら知られている生物……というわけではありません。彼らを世界的有名にしたのはフリオ・コルタサルというアルゼンチンの小説家です。彼の短編集『遊戯の終わり』には「山椒魚(原題 Axolotl)」という話が収められています。語り手である男が、ウーパールーパーを鑑賞するためパリの植物園の中の水族館に足繁く通い、彼らの観察に取り憑かれ、ウーパールーパーと思考をリンクさせていくうちに自分がウーパールーパーになってしまう、というお話です。

 

ぼくは山椒魚に取り憑かれていたことがある。植物園のある水族館に出かけて行っては、何時間も山椒魚を眺め、彼らがかすかに身動きしたり、じっとうずくまっている様子を観察したものだ。今では、そのぼくが山椒魚になっている。(木村榮一 訳)

 

※ここでいう山椒魚=ウーパールーパーのこと。

 

コルタサルはぶっ飛んだ発想の持ち主ですね。もし自分がウーパールーパーだったら……読んでいる途中でいろいろと妄想を楽しめます。ところでコルタサルのこの作品でも時間性との関係で大変重要な意味を持つことになるのですが、ウーパールーパーは幼形成熟の生物です。つまり子どもの特徴を留めたまま、一生を終えます。かつてアステカ人もこのウーパールーパーの摩訶不思議な特性に魅入られ、彼らをとある神さまの化身に喩えました。

 

詳しくはスペイン情報誌 acueducto のブログで紹介していますので、そちらもぜひご覧ください★ミ(・━・)彡→ウーパールーパーのおはなし