スペイン語のアルファベットを見ると、1つだけ英語にない文字がありますよね。
その唯一違う文字が”Ñ/ñ”。スペイン語を始めたばかりの時はこの文字に違和感を持つ人も多いと思います。ニョロニョロの棒(~)は“virgulilla”と言います。
Ñの発音は日本語の「にゃ」行の「にゃ、にゅ、にょ」の音と同じです。
Ñの文字が生まれたのは中世のスペインです。
当時、読み書きができる数少ない人たちであった修道士は、古典作品やギリシャやローマなどの書物を転写したり、翻訳したりする仕事もしていました。
書き写すための羊皮紙や紙は高価で不足しがちだったこと、転写の仕事は非常にハードだったことから、資源と労力をできるだけ節約するため、よく使われる言葉や繰り返される文字に省略形を使うのが普通でした。
その慣習が時代とともに広がり、さらに完成され、手書きから印刷の時代になっても引き継がれているものもあります。その一つがÑの文字です。
Ñの文字は“NN”、“MN”、“GN”、“NG”、“NI”のつづりや発音を置き換えるために使われるようになっていきました。たとえばdamnu→daño、senior→señorとなったわけです。
13世紀、アルフォンソ10世はカスティーリャ語の基本のルールを定めましたが、その中にはÑの文字が含められていました。
1492年に刊行されたアントニオ・デ・ネブリハの文法書『カスティーリャ語文法』にもÑが含められており、その頃にはすでにÑの文字は日常的に使用されていたようです。
このようにスペイン生まれの唯一の文字Ñはスペイン全体で使われるようになり、やがて歴史的に関係を持った他の国の言語にも取り入れられていきました。歴史的には関係はない国でも、同じ音が存在する言語に取り入れられている例もあるそうです。
何となく不思議な感じがするÑですが、紙と労力の節約のために生まれた文字だと思うと人間味を感じますね。