スペインは、カトリックの一国としてのイメージが強いですよね。事実、スペインに数多ある楽しいお祭りも、元々は宗教上の行事であったものが多く、キリスト教の知識があるとこうしたイベントを何倍も楽しめます。
カトリックも含めたキリスト教は世界最大規模の宗教で、全世界で見れば21億人と、世界総人口のうちおよそ3割がこの宗教の信者です。そのうちのおよそ半数が、ローマ教皇を頂点とするカトリック教徒です。では、他の教派・宗派ではどのようなものがあるのか確認してみましょう。
まずは各国に「正教会」と呼ばれるキリスト教の教派があります。例えば東方では、ロシアのロシア正教会、そしてセルビア、ブルガリア、ルーマニアなどのバルカン半島諸国にそれぞれセルビア正教会、ブルガリア正教会、ルーマニア正教会と、国ごとの正教会があります。これらは共に1つの「正教会」の教義を信奉していて、互いに異なった信仰があるわけではありません。ただ正教会は、一国につきその国名を冠した一組織を形成する決まりがあるので、このように複数の正教会があるわけです。
これらの東方の正教会のルーツは、遡ること1054年、ローマ教会(西方教会)とコンスタンティノープル教会(東方教会)の東西分裂にあります。ローマ教皇レオ9世とコンスタンティノープル総大司教ミカエル=ケルラリオスが相互にお互いを破門にするという大決裂で、これによってキリスト教は西と東に分離することになったのでした。
一方、南方のエジプトでは、コプト正教会という教派が発展しました。「コプト」とは元々エジプト人を指すギリシア語から由来しています。エジプトといえばイスラム教国として知られていますが、人口の10%はコプト正教会の信者です。エジプトよりさらに南方のエチオピアにもエチオピア正教会があります。ただ、アフリカのこれらの正教会は、上述の東方の正教会とは別の系統に属しています(非カルケドン派教会)。
そしてカトリックと並び重要な教派はプロテスタントですよね。1517年、ドイツの神学者マルティン・ルターがカトリック教会に突きつけた「95ヶ条の論題」により、宗教改革の道が切り開かれました。福音主義(信仰や聖書の福音のみに基づく信仰)として、ルター派、カルヴァン派などと分かれます。またイギリスでは、1529年にヘンリー8世がカスティーリャ王国出身の妻、カタリナ(キャサリン)との結婚無効を成立させるため、カトリックから独立してイングランド国教会というこの国独自のキリスト教会を樹立させます。
後世になって、特にアメリカを中心としてさらに新宗派・教派が誕生しているのもよく知られていることです。モルモン教、クエーカー教、バプテスト派、などなど……今ではこうした宗派・教派の数は何百にも及びます。