苗字はスペイン語でapellidoと言います。
日本では、名前は姓名、つまり苗字一つと名前で成り立っていますね。たとえば、山田太郎さんなら、山田は苗字で、太郎は名前です。
スペイン人の名前は、たとえば、María García Lópezなら、Maríaは名前、García Lópezはどちらも苗字で、名前と苗字2つで構成されています。苗字が2つあるのは、父方の苗字と母方の苗字をもらうためです。
でも、苗字っていつから使われるようになったのでしょう?
なぜ、スペインでは2つの苗字が使われるのでしょうか?
古代ローマ人は、特に貴族は個人名を表すpraenomen、士族を表すnomen、士族の中の家族名cognomenという3つの要素を使って、個人を識別していたそうです。
また、ギリシア人は個人を識別するために出身地を名前につけていました。
ただ、大多数の人は狭い地域でのみ暮らしていたため、苗字をつける必要性がなく、名前だけで事足りていたのです。
この状況が変わったのが12世紀ごろで、人口が増え、経済的にも発展し、個人を識別する必要性が高まってきました。
古くはスペインでも同様に貴族は他と区別するために苗字をつけるようになり、父親の名前を苗字に使うようになりました。たとえば、Lópezという苗字はhijo de Lope(ロペの息子)の意味、Álvarezはhijo de Álvaro(アルバロの息子)の意味といった具合です。
だんだんと苗字が広まり、父親の名前に関係なく苗字がつけられることも多くなり、Martínez, Sánchez, Rodríguezなどの苗字が使われるようになりました。
また、違った由来の苗字も使われるようになりました。たとえば、身体的な特徴の苗字(Moreno, Delgado, Calvo)や職業に由来する苗字(Carnicero, Pastor, Herrero)、出身地に由来する苗字(Cuenca, Zaragoza)などがそうです。
16世紀ごろにはカスティーリャ地方の貴族の間で2つの苗字を使うのが一般的になり、18世紀には他の階層の人々も2つの苗字を使うようになっていきました。より正確に個人を識別するためだったそうです。
19世紀には法律で、父方と母方の2つの苗字を持つ権利が定められました。
そして現在に至ります。通常は父方の苗字、母方の苗字という順番でつけられますが、子供が生まれて出生届を出す時にどちらの苗字を先にするかを決めることができます。また、成年(スペインでは18歳)に達すると、苗字の順番を変更することができます。
ヨーロッパの他の国を見ると、たとえば、イタリアでは父方の苗字のみが使われてきましたが、2016年から父方、母方のどちらの苗字も使えることになりました。フランスでも同様で、2005年の変更で、両方の苗字を使うことができ、どちらの苗字を第一の苗字にしても良いことになりました。スウェーデンはちょっと変わっていて、通常両方の苗字が使われますが、夫婦(またはカップル)で同意が得られない場合は母方の苗字のみが使用されるそうです。
スペインの父方と母方の両方の苗字を使うというシステムはなかなかいい案だと思いますが、どう思われますか?