マルク・ベルナべ氏は1976年バルセロナの生まれ。彼は知る人ぞ知る、漫画やアニメを専門とするプロの日本語翻訳家で、スペインで売られている日本の漫画は彼の翻訳のものが多いのです。今回は、マルク氏にスペインの新聞がインタビューの1部を抜粋して記事をご紹介致します。
2019年1月11日 EL MUNDO Web記事より
質問1:あなたの年齢ならば、「マジンガーZ」や「ハイジ」の世代だったのではないですか?
答え:「マジンガーZ」がテレビで放送されていた頃、幼いながらに「発射〜!」など叫んでいたことを覚えています。それが僕のアニメの1番古い記憶かな。そのあとは「ハイジ」や「母をたずねて三千里」など観ていました。
質問2:初めて70年代、80年代の漫画やアニメを訳した時はどうでしたか?難しかったですか?それともお手のものでしたか?
答え:スペインでマジンガーZのアニメが放送されていた時、そんなに思い入れはなかったんです。でも「ドラゴンボール」や「風の谷のナウシカ」「アキラ」が入ってきた時、翻訳が内容に忠実でない気がしていました。意味の無い文章や、セリフがまったく別のニュアンスにすり替わっていたりして。日本語がわかる人が少ない時代だったし、それをいいことに結構いい加減な訳文があった時代だけど、今では同じ仕事でも随分レベルが上がって、少しの間違いも許されない。SNSで間違いを指摘される可能性もあるし、慎重に仕事をしています。
質問3:漫画やアニメだけでなく、文学まで日本語からスペイン語に直接訳されるようになっていますが、以前は違いましたか?
答え:以前は、日本への関心も低く日本語を流暢に話すスペイン人はほとんどいませんでした。日本人がスペイン語に訳し、それをスペイン人(プロではない)が文章校正している事が多かったのです。しかし、そのやり方は理想的ではありません。プロの翻訳者が訳した文を、後で手直しするやり方の方がいいです。
質問4:語学の知識がない人にとって日本語を習得するのにどれだけの時間がかかりますか?
答え:幼少期から学ぶならともかく、大人は子供ほど頭が柔らかくないのでどんな状況であっても日本語を学ぶ事は容易とは言えません。長い時間をかけていくしかないのです。僕は、幸運にも日本語を始めてから5年で最上級の日本語レベルを取得できましたが、翻訳の勉強をしていたし、日本にも1年間住んでいました。もしあなたが一家の大黒柱ならば、家のローン返済や子供の事など生活に追われて、習得の時間は短くなるでしょう。しかし、いつ始めても遅すぎることはないのです。物を書くと言う事は、繊細な作業でもあるので。日本語はスペイン語圏の者にとって、話すだけなら発音はそうは難しくはありません。英語圏の人の方が、日本語を話すのに苦戦していますよ。
質問5:日本語での物書きが困難ならば、読み書きせずに会話だけである程度日本語で暮らせますか?
答え:はい。僕にも何人か日本語の読み書きは出来ないが会話だけできる知り合いがいます。でも看板も読めないし、レストランのメニューも読めない。それは、多くのことを見逃していることになり非常に残念です。
質問6 近年のスペインでの漫画市場はいかがですか?
答え:再び盛り返してきています。出版社業界も活気付いていると手応えを感じています。2017年は、739タイトルの本を出しましたが、2018年は815タイトル。出版不況で倒産したり、市場が小さくなった時期もありましたが取り戻して来ている。2019年に期待したいです。
質問7:スペインでの漫画はどれほど売れるのですか?
答え:初版が1.000部だけ出版される本もありますが、10.000部以上出版されるものもあります。ベストセラーになると増刷されますし、実際、僕が出した 「マンガで日本語」(Japonés en viñetas)は50.000部を販売しました。
質問8:世代によって漫画の消費は違う?
答え:基本的には同じなのですが、今の若い人たちは昔の若者よりも情報源がたくさんある。僕が昔テレビで「ドラゴンボールZ」を観ていた時、いつもヒントとなるフラグを探す事に夢中でした。いとこの知り合いが、日本から持ってきた最新号を読んだりして、もっともっと続きを見たがったりしたものです。今は、どんな漫画の情報もすぐ次の日には手に入るから、時差が無くなってきたんです。