広大な砂の大地に刻まれたペルー南部のナスカの地上絵。地球上でもっとも偉大で、もっとも神秘的な遺跡群の1つと言えるでしょう。首都リマから400kmほど南下したところにあります。地上絵が描かれたのはインカ帝国時代前の、紀元前1000年から400年の間とされています。2000年以上前に、なぜ、この地上絵は描かれたのか? 今でも多くの研究者や愛好家が探求を続けています……宇宙との交信? あるいは他の理由? もしかして宇宙人が描いた? 不思議な幾何学模様で描かれた巨大な動物たちは、現代人の私たちの心を深く揺さぶります。
さまざまな学説が交わされるナスカの地上絵ですが、先日、とても興味深いニュースが発表されました!!
地上絵にはサル、クモ、シャチなどさまざまな動物が描かれていますが、まず私たちは、古代ナスカ人たちは自分たちが実際に見たことのある動植物、その地域に生息していた獣や鳥を描いたと考えるでしょう。そして実際にこれらの動植物の種を厳密に特定することは、古代人がなぜ絵を描いたのか? の理由を探る重要な手がかりになります。
しかしながらこのたび、地上絵に描かれている鳥は実はこの地域に生息していた種ではないという学説が、日本の鳥類学の専門家チームによって発表されました。2019年6月20日、Journal of Archaeological Science: Reportsに掲載されたのは、江田真毅(北海道大学)准教授の研究チームの論考「Identifying the bird figures of the Nasca pampas: An ornithological perspective」。
この論考では16個の地上絵に描かれている鳥の種を検証しています。著者の1人の江田氏によるなら「これまで、描かれている鳥たちは、一般的な印象や、それぞれの鳥を表現しているわずかな線の形態学から種類を特定されてきました。私たちはこれらの絵に描かれているのに近い鳥のくちばし、頭、首、胴体、翼、脚、尻尾を観察しました。そしてペルーに現在生息している鳥と比較を行いました」とのこと。
この検証の結果、地上絵に新しい発見がありました。有名な地上絵の「ハチドリ」は具体的にはカギハシハチドリと特定。さらにグアナイムナジロヒメウとペリカンの種類の鳥も特定しました。そして面白いことに、「コンドル」や「フラミンゴ」と推定されていた有名な地上絵は、実際の鳥の特徴に当てはまらず、別の種類であることが示唆されました。
さらにこれらの鳥の中には、ナスカ地方に生息していなかった種が含まれるといいます。たとえばカギハシハチドリは、アンデス山脈の山腹の森や、エクアドルに近いペルー北部に生息しています。またペリカンたちは海岸沿いに生息しています。
「地上絵を描いたナスカ人たちは、海岸地帯の食糧を収集している時にペリカンを目撃していた可能性があります。私たちの発見で、土着の鳥ではなく、外来の鳥が描かれていたことが明らかになりました。この発見はなぜ彼が地上絵を描いたかを知るための手がかりとなるでしょう」と、江田氏。
今から遥か昔、古代ナスカ人たちは何を想って巨大な鳥を描いたのか……。鳥たちの正体とともに地上絵の意味も今後解明されるでしょうか?