まずはこの曲をお聞きください。
スペイン語を長く勉強していたら、この旋律を耳にしたことがあるかもしれません。これはスペインでもっとも知られている民謡の1つ「ラ・タララ」です。哀愁ただようメロディラインですが覚えやすく、なんども聞いていたら自然と耳に残る名曲です。「タララ」という娘のことを歌う曲。彼女は緑色のドレスを着て踊りながら、オリーブ畑の若者たちを誘惑します。そんな彼女を憐れんでいる民謡、と言えます(tararaには「理性をなくした人」「狂人」という意味があります)。
La Tarara, sí;
la tarara, no;
la Tarara, niña,
que la he visto yo.
Lleva la Tarara
un vestido verde
lleno de volantes
y de cascabeles.
La Tarara, sí;
la tarara, no;
la Tarara, niña,
que la he visto yo.
Luce mi Tarara
su cola de seda
sobre las retamas
y la hierbabuena.
Ay, Tarara loca.
Mueve, la cintura
para los muchachos
de las aceitunas.
もともとは、子どもたちが手を繋いで「輪になって踊る」ための歌でした(日本でも「かごめかごめ」や、最近では「マイムマイム」とかそうした定番曲がありますよね)。各地の民謡だったので、それぞれの土地で歌詞のバリエーションがありました。一体どこからやってきた歌なのか、専門家の中にはセファルディ(スペイン語を話すユダヤ系の人びと)のコプラという韻文詩からの由来を示唆する人もいます。ただ、「ラ・タララ」の最初のバージョンが確認されているのは19世紀になってからのこと。そして今も人びとの間でよく歌い・聞かれているのは、グラナダのフェデリコ・ガルシア・ロルカが編曲したものです。
フラメンコを愛していたロルカは1931年に、カンタオーラのラ・アルヘンティニータと共に、採譜した数々のスペイン古謡をレコード収録。この時ロルカがピアノの伴奏をし、ラ・アルヘンティニータが歌いました。収録された曲の中にはフラメンコの踊り手にはおなじみの定番曲「18世紀のセビジャーナス」も含まれます。「ラ・タララ」は『13のスペインの古謡』の中にまとめられました。
なおロルカとラ・アルヘンティニータの当時のレコードは今なら、Spotifyで原曲を聴けます(すごい時代です!)。ただこのレコードには残念ながら「ラ・タララ」は含まれませんが……。
「ラ・タララ」はカマロン・デ・ラ・イスラもカバーしています(歌詞が若干異なります)のでカンテファンには良く知られた曲だとも思います。
先日の6月5日がロルカの誕生日だったので、さまざまな歌手による「ラ・タララ」をたくさん聞いたADELANTEスタッフなのでした。