スペインの水に関すること。水不足のこととか、シャワーの時間のこととか、色々と耳にしますよね。レストランで自動的に水が提供されるのかどうかや、その水の質についても旅行者にとっては気になるところ。スペインでは飲食店で提供される水は二種類あり、無料の「agua del grifo(水道水)」とペットボトルに入った有料のミネラルウォーターがあります。そして今、スペイン国内でも飲み水の質を気にする人が増えていて、タダで飲める「agua del grifo」を注文するのを避ける人が出てきています。でもこれは、レストラン側、そして水道会社側にとっては頭が痛い問題。なぜなら彼らの立場から言うと、スペインの水道水の質には全く問題がなく、それを避けるのは健康上の理由というよりも、人目を気にする社会的・文化的な理由によるからです。
消費者連盟のデータによると、現在は14%の商業施設・店舗が水道水の提供を避け、消費者の10人に1人が、この水を飲みたくても「店側が提供しない」あるいは「注文することが恥ずかしい」という理由からあえて注文しなくなっています。さてお店側にとっては水道水とミネラルウォーター、どちらを注文してくれるのが好ましいのでしょうか。スペインの水資源と衛生設備の供給者たちの協会AEASの代表フェルナンド・モルシージョ氏によると「水道水はミネラルウォーターの1/300のコストで済み、かつ厳しい品質管理チェックをクリアしている」とのこと。簡単に言うと「安くて安全」。そしてスペインでは1日に1人当たり132リットルの水道水を家事その他の目的で消費しているそうです。さらに都市用水や工業用水などトータルすると1人当たり240リットルの水を消費している計算です。日本の浴槽1杯強。節水のイメージが強いスペインですが、水の消費は結構な数値ですね。ちなみに水道代はスペインはヨーロッパで最も安い国の1つです。モルシージョ氏は、特に夏場において避暑対策やプールなどのレジャー、冷水、シャワー時間の増加などによって水の消費がスペインは増加するが、それでもスペイン人たちは一般的に「水を節約している」という意識が高いのだといいます。
水は貴重で、生命に欠かせないという「もったいない精神」があるからこそ、それが水の質を選びたくなる偏向へと結びついているようです。実際のところ提供される水の質は、スペイン全土で均一ではなく、水道設備の整っているところほど高いです。特にマドリードでは非常に良質な水道水が供給されています。だからマドリード人はagua del grifoでも美味しい水を飲めるのですが、でも水への意識が高いので、ミネラル成分の高い山水が人気です。特にグアダラマ山脈の水が大人気。その一方で、海岸地方では土地自体が石灰質なので、水自体にその石灰はほとんど溶けていないけれども、そのまま料理や飲み水にすると石灰の匂いを感じてしまう、とモルシージョ氏はいいます。
飲み水は大切! けっこう気にするスペイン人は多いと思います。ミネラルウォーターのサーバーを買ったり、「agua del grifo」は頼まないと決めていたり……。節約の意識が高いことは事実なので、ホームステイ先などでシャワーを借りるときはしっかり使用時間を相談しておきましょう。水をめぐってスペイン人と議論したら白熱しそうです。