来る11月11日は、聖マルティヌスの日(Día de San Martín)です。収穫祭の日であり立冬の日で、スペインでは、マタンサ(matanza)という、冬ごもりのための豚肉の保存食準備の日でもあります。スペインには「すべての豚にサン・マルティンがやって来る」(a todo cerdo le llega su San Martín)という諺がありますが、意味は、「悪事を働く者にはいつか天罰が下る」というものです。人間の食べ物になってくれる感謝すべき豚に、このような言葉は合わない気もしますが、日本語ならば「身から出た錆」や「自業自得」といったところでしょうか。
スペイン各地で行われるこのマタンサですが、スペインのみならず、ヨーロッパ各地で農作物の育たない冬場の保存の糧として、豚をつぶして加工肉にする習慣があります。春夏秋と十分に育った家畜を伝統的な方法で屠殺、解体した後に食肉処理を行って加工するのです。スペインでは、embutido(詰め物)と呼ばれるお肉が盛んな国で、チョリソー(chorizo)、フエット(fuet)、モルシージャ(morcilla)、サルチチョン(salchichon)、エスペテック(espetec)、カニャ・デ・ロモ(caña de lomo)、ハモン(jamón)などがあります。バルやレストランに行けば必ずメニューにあるこれらの食べ物は秋にまとめて作られるのです。マタンサでは、マタリフェ(matarife)というプロが豚を処分し、一般的には町の人々が肉を処理したり加工しますが、その前に獣医が来て肉の一部を持ち帰り、病気を持っていないかどうかを確認するのです。後ほどOKサインが出てから、腸詰めの作業を開始します。
このようにスペインでは、当たり前のようにスーパーやお肉屋さんで見かける食肉加工品も様々な過程を経てつくられているのです。