言葉の由来がわかる語源研究は、その意外性に驚かされたり笑いを誘われたりするものです。今回は、サンドウィッチ伯爵からボイコット大尉まで、実在モデルが存在する12の言葉を挙げてみました。
1. サンドウィッチ・・・世界各国で愛されている食べ物だが、ギャンブル好きのサンドウィッチ伯爵がカードゲーム中、いかに早く中断せずに食事ができるか悩んだ末、パンに具を挟めばそれが叶うのではないかと思いつき、給仕に作らせたところから始まった。カード仲間も伯爵のサンドウィッチを見て同じものを注文するようになり、遂には食べ物の名前に伯爵の名がついたのである。
2. ナチョス・・・1943年メキシコはコアウイラ州にあるPiedras negras(ピエドラス ネグラス)というレストラン “El Moderno” に、北アメリカ人兵士数人とその妻たちが訪れた時のこと。店の支配人はお客を招き入れたものの、閉店まぎわの台所にあった食材はトルティーヤとチーズとハラペーニョのみ。そこで、それらを最大限に使って誕生したものが現在のナチョスである。兵士の妻たちはこの偶然のレシピに感激し、食べ物の名前を問うた。しかし、支配人は自身の名前を聞かれたと勘違いして、こう答えた「ナチョです」。彼の名は Ignacio Anaya 、イグナシオ(Ignacio)の愛称は Nacho である。
3. タッパー・・・アール・サイラス・タッパーはアメリカ合衆国北東部のニューハンプシャー州の牧場に生まれ、コスタ・リカの自身が所有する島で亡くなった。彼の成功は彼のアイデアひとつで築かれたのだ。食べ物を新鮮に保存したり、それを持って移動したりが可能なこの上なく便利な容器を発明したことによって巨額の富を得たタッパー氏。そして商品にも自身の名前をつけたのである。
4. ボイコット・・・アイルランドの土地差管理人であったボイコット大尉から来た言葉で、小作人達と争いになり排斥(ボイコット)されたことが由来している。
5. カーディガン・・・クローゼットに誰しも必ず持っているおなじみの前開きボタンのアイテムは、流行関係なく世界中の人々から愛用されている。英国のカーディガン伯爵ジェイムズ・ブルデネルが、クリミア戦争で負傷した際に寒がりであった為作られたと言われている。
6. カルパッチョ・・・1950年にイタリアはヴェネチアのレストランのオーナーシェフ、ジュゼッペ チプリアーニが赤身の薄切り牛肉をソースであしらった事で有名だが、実はそれよりもずっと以前にイタリアの画家ヴィットーレ・カルパッチョがこの料理を好んで食べていた。チプリアーニはカルパッチョの絵でこのレシピにインスピレーションを得ていたのである。
7. ブーゲンビリア・・・フランス人の探検家ブーガンヴィルは、後に彼の名を冠されることになる島(ブーゲンヴィル島)をアメリカ独立戦争に従事していた際見つけたそうである。遠くブラジルから来た、今ではヨーロッパの至るところで目にすることができる植物ブーゲンビリアもまた、いにしえ人の中から由来していたのである。
8. シルエット・・・18世紀のフランスの蔵相エティエンヌ・ド・シルエットの名前に由来するが、実は国の情勢が悪くなった際にいち早く市民の年金を減らした事から言われており、無常に速やかに酷い事をやってのけるというネガティブな意味が込められていたそうだ。その後意味が変わり、流行していた肖像画の輪郭をシルエットと呼ぶ習慣がついたのである。
9. ニコチン・・・フランスの外交官 ジャン・ニコの名に由来する。 彼は、リスボンであらゆる病気に効くと言われていたタバコ種の植物を栽培し、メディチ家のカトリーヌ・ド・メディシスに送ったそうだ。その後の研究から、タバコの葉には偏頭痛に効く成分が含まれているとの発見があったのだ。そして、のちにフランスの貴族階級に瞬く間に流行したタバコとなった。
10. ベシャメルソース・・・ルイ14世の名誉主任執事であったルイ・ド・ベシャメイユに対し、宮廷シェフであるフランソワ・ピエール・ラ・ヴァレンヌが敬意を示す意味を込めてレシピを作ったとされている。財務官もしていた著名な彼がその役職ではなく、コロッケのベシャメルソースによって名を馳せたのは滑稽ではあるが。
11. リンチ・・・アメリカ独立戦争時のバージニア州の独立派有力者チャールズ・リンチ大佐から来ていると言われている。集団で執行される私的な制裁の語源は、彼が独立戦争の最中に敵の捕虜に対してリンチ行為を行ったことから命名されている。
12. レオタード・・・フランスの曲芸師ジュール・レオタールが着用していたことからこう呼ばれるようになった。寒さしのぎやショーの際に体を曲げやすいようにと作ったものである。見た目も着心地も良い機能を兼ね揃えたレオタードは、レオタール氏が寒がりだったことから生まれた。